第2特集 看護学生論文―入選エッセイ・論文の発表
エッセイ部門
骨髄提供を通して見えてきた新しい自分
神津 晴美
1
1神戸市医師会看護専門学校第2看護学科(2年課程)
pp.688-689
発行日 2009年8月25日
Published Date 2009/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101263
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私は今,骨髄バンク(以下,バンク)を通じて骨髄提供を無事に終え,新しい自分に向き合っている。提供に至る数か月は,不安,葛藤,自己概念の混乱など危機の連続で,流した涙も人生で一番多かった。その都度,夫を始め多くの人に支えてもらい,感謝の気持ちでいっぱいだ。その中で見えてきた新しい自分というのは「母親として生きたい自分」であった。支えてくれる人がいて初めて,これからの自分を切り開いていける,この思いに至る心理過程をここに述べたい。
バンク登録の動機は,准看護学校の血液・造血器患者の看護の講義で配られた,記者のドナー体験を記した新聞記事だ。私はそれを読み,講義で知り得た白血病の患者さんの治療のすさまじさから比べればドナーの負担は大きくないと感じ,准看護学校卒業時,献血センターでドナー登録をした。そして,その年の冬,HLA適合通知が届いた。夫から「登録の時に母親としての自覚が足りないと思った」と言われ衝撃を受けた。夫には登録の動機を話していなかったので仕方なかったが,確かにそうかもしれない,と考え込んだ。手術の不安もあり,母親,健康な自分という自己概念を脅かされる。しかし,翌日夫に登録の動機を話すと「それなら応援する。実は自分にも考えがある」と一枚のパンフレットを見せてくれた。それは難病の子どもたちの夢を叶えようというものだった。夫も秘かに応援していた様子である。
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