書評
―《シリーズ ケアをひらく》『発達障害当事者研究ゆっくり丁寧につながりたい』―医療者の「障害」理解を新たな境地へ誘う新時代の著作
上野 一彦
1,2
1日本LD学会
2東京学芸大学
pp.643
発行日 2009年7月25日
Published Date 2009/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101247
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●発達障害こそ“連続体”である
わが国ではLD,ADHD,高機能自閉症,アスペルガー症候群などを法律的に,身体障害,知的障害と区別して「発達障害」とひとまとめにして呼ぶ。本書の著者綾屋紗月さんは2児の母であり,後年,「アスペルガー症候群」と診断され,「いったい私は何者だろう……。長年の問いに対し,『当事者研究』いう時代の波が,私に千載一遇のチャンスをあたえてくれた」と語る。
著者の長年の実体験を,単に「従来の」自閉症概念になぞらえ重ねていくのではなく,みずみずしく,ダイナミックに「発達障害」という大きな枠の中でとらえなおそうとしている。かねがね私自身,臨床体験の中で「発達障害こそスペクトラム(連続体)である」という想いを強く抱いてきた。
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