連載 教育の地平線・6
―「『障害は個性』と言いたいけど,そこまではまだ僕らの知恵が行き届いてない。だから理解と支援が必要なんだ」―発達障害に寄り添って34年。“LD教授(パパ)”の回顧録 上野一彦さん
本誌編集室
pp.557-561
発行日 2009年7月25日
Published Date 2009/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101230
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「LD」には複数の意味がある
──2003年の文部科学省の全国調査で,小・中学校の通常学級に学習面や行動面に問題をもつLD(学習障害)やADHD(注意欠陥・多動性障害)等の子どもが約6%いるとの発表が出て以来,日本でも発達障害が大きな教育課題と認知されています。LDだけで60万人以上が推定されるとか。今やこうした用語にある程度の市民権が得られた一方で,誤解による弊害が生じているとか。
上野 『LD教授の贈り物』(講談社,2007年)を出版したときに,ある新聞記者が「上野先生は障害者だったんですか?」なんて電話をかけてきて返答に困ってしまったことがあるけど,「障害」の定義について,日本では昔と今で大きく変わってきてますね。「LD」1つとっても,もともと「Leaning Disabilities」という教育用語で「Leaning Disorders」という医学用語とは別物であったし,“学習困難”という意味の「Leaning Difficulties」や,“学習の仕方の違い”というさらに広義の「Leaning Differences」という別の意味の言葉が欧米ではそれぞれ用いられてきた経緯があって。
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