書評
―『保健医療福祉 くせものキーワード事典』―インタープロフェッションの教育・実践に格好のテキスト
吉川 ひろみ
1
1県立広島大学保健福祉学部
pp.128
発行日 2009年2月25日
Published Date 2009/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101131
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「社会的入院」「ADL」「問題行動」など,わかっているようでわからないことば,専門領域によって意味が違ってしまうことば,使われる文脈によってニュアンスが変わることばがある。
本書で取り上げられている28のキーワードは,理解を深めるほど,簡単に説明することができない奥が深いことばである。「ことばの風景」と題したコラムで,キーワードが使われる現実の場面が描き出されている。こうした現実の文脈の中で使われていることばに触れることにより,読者は単なることばの理解に留まらず,状況を適切に理解し,ケアのあり方を考えることができる。執筆者の立場が明確に示されている場合もあり,よりよいケア実践を目指すうえで重要となる議論の糸口もみえる。きちんと定義されていることばには適切な出典が示され,類似語についてもわかりやすい説明が記されている。本書を通して保健医療福祉系の学生は,現場での実践を知ることができ,患者や利用者,他職種と会話する際に役立つ情報を得ることができる。在宅ケアの現場で働く専門職は,マスコミや他の専門領域で常用されてきたことばの背景を知り,他の専門職との連携が容易になるだろう。信頼し合える関係を築くうえで,共通のことばを使うことは重要である。何気ない専門用語が越え難い溝を作ることはよくある。
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