連載 医療と社会 ブックガイド・88
『死ぬ権利 カレン・クインラン事件と生命倫理の転回』その2
立岩 真也
1
1立命館大学大学院先端総合学術研究科
pp.1078-1079
発行日 2008年11月25日
Published Date 2008/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101073
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前回に続いての紹介になる。クインランの人工呼吸器の取り外しを認めるようにという原告側の訴えは,州の高等裁判所では認められなかったが,最高裁判所では認められたのだった(1976年)。
この本は,その経過をていねいに辿っていくのだが,そこでまず一つわかるのは,高裁判決に対するバイオエシックス学者たちの発言・批判があったこと,また,州最高裁での審理にあたって,原告側はそうした学者たちに意見を求め,それを受けての主張もなされていること,そしてそうしていくらか洗練された原告の訴えを認めた判決もまたその線に沿ったものであり,そしてその判決は,メディアにも医療者側にもバイオエシックス学者にも,おおむね─というのは,全米医師会は倫理委員会のことでいくらか批判したし(p.210─211),倫理学者でもアナスからはいくらか批判がなされたのだった(pp.221─224)─好評であったということだ。
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