連載 東洋医学講座 鍼灸医学を中心に・10
内科領域における鍼灸治療
石崎 直人
1
,
北小路 博司
1
1明治国際医療大学臨床鍼灸学教室
pp.884-889
発行日 2008年9月25日
Published Date 2008/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101030
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はじめに
鍼灸治療は腰痛や肩こり,膝痛などのいわゆる運動器系(筋・骨格系)の症状に対して行われる治療であるというイメージが一般に浸透している。実際に,全国でアンケート調査を行った結果では,鍼灸治療経験をもつ者の8割以上が上記のいずれかの症状を主訴として鍼灸治療を利用している1)。
しかしながら,鍼灸医療発祥の地である中国では,鍼灸は生薬(漢方薬)と並んで主流の医療であった経緯から,身体のあらゆる症状に対して適用されてきた。それらの症状の中には,消化器系,呼吸器系,内分泌系など内科領域や,排尿の異常(泌尿器科),眼や耳の症状(感覚器)なども含まれている。また患者の主訴が筋・骨格系の症状である場合でも,実際の臨床では付随する症状や,第2,第3の愁訴として訴えられる便秘や胃部不快感などの消化器系の症状にも同時に対応している場合が少なくない。事実,化学療法などに伴う嘔気に対する鍼灸治療の効果は,多くの臨床試験により一定の評価を受けており,鍼に関する研究の中で最もエビデンスが高いものの1つに挙げられている。
今回は消化・呼吸・循環・代謝内分泌などを中心とした内科領域の症状に対する鍼灸治療の適応と可能性について概説する。
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