連載 医療と社会 ブックガイド・83
『〈個〉からはじめる生命論』3
立岩 真也
1
1立命館大学大学院先端総合学術研究科
pp.564-565
発行日 2008年6月25日
Published Date 2008/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100949
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この連載では珍しく同じ本について3回目になる。であるのに,その本で中心的に論じられている「ロングフル・ライフ訴訟」についてはふれていない。最初のところでとりあげられる,どんな状態のどんな存在を「人」とするのかという「線引き問題」について述べられていることを紹介してきた。そこで加藤は,「それに向かって呼びかけることが無意味ではないような対象すなわち〈誰か〉として見出す」(p.42)ことがその問いに対する答になると言う。
だが,私はそれで答をもらったとは思えない。
前回紹介したように,加藤は,「呼びかけ」に対する「応え」があることを条件に加えていないのだった。加えたら応える能力を相手が有することを求めることになり,条件をきつくすることになってしまう。ここには,従来の生命倫理学が,「人」と認めるのにきつすぎる条件を設定しているという思いがあるだろう。
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