連載 医療ソーシャルワーカーの相談窓口から
"個を生きる"ことへの援助
田戸 静
1
1葛飾赤十字産院医療社会事業部
pp.271
発行日 1987年3月25日
Published Date 1987/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207101
- 有料閲覧
- 文献概要
ソーシャルワークの本領は,個人が社会の成員として,主体的に"個を生きる"ことを援助するところにある。このように言い切れれば格好がよいのだが,現実はなかなかそうはいかない。私自身,20数年ソーシャルワーカーをやってきて,果たしてそのような援助ができただろうかと,いつも自問自答,一喜一憂している毎日なのである。
医療ソーシャルワーカーの仕事は,医療を必要とする対象が自らの力では解決しえない問題に直面しているとき,信頼関係を基礎として対象に働きかけ,彼らが自らの意思で解決の方途を選びとり,現実に適応してゆけるよう側面から支援することである。ところが,対象が自分の決定に従って生きてゆく,言い換えれば,"個を生きる"方途を選択するまでには,相当な精神的葛藤と時間とエネルギーとを必要とする。対象は,その過程で他者の存在を認め,それを通じて自分の感情の動きを知るようになるのである。
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.