連載 人が生きる現場・11【最終回】
もう一つの自宅―かあさんの家―特定非営利活動法人ホームホスピス宮崎
服部 洋一
1
1静岡県立静岡がんセンター研究所
pp.279-281
発行日 2008年4月25日
Published Date 2008/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100891
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◆冬の温もりのなかで
南国の太陽は冬の最中でさえ光の恵みを惜しげもなく届ける。
夫妻は並んで腰かけ,洗濯物が気持ちよさげに揺れる庭を眺めている。逆光に浮かび上がる2人の背中に,通り過ぎていった長い歳月の重みが感じられる。
床のCDラジカセからはトロイメライの調べが静かにこぼれている。いい曲だ,と感じる。台所で昼餉を準備するスタッフの談笑とリズミカルな包丁の音が混じる。この家で時間はゆっくりと流れる。
日本は本当に豊かな国なのだろうか。いま,長年連れそった伴侶と一緒に人生最後の時間を楽しむことができる人はむしろ幸運だ。ここはそれができる,ごく例外的な「家」だ。
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