今月の臨床 子宮体癌診療の動向─これだけは知っておきたい
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3.子宮体癌治療後のHRTの可否
篠原 康一
1
,
若槻 明彦
1
1愛知医科大学産科婦人科
pp.1686-1689
発行日 2010年12月10日
Published Date 2010/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102531
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はじめに
有経女性の場合,子宮体癌の治療は一般に子宮全摘と両側付属器切除,リンパ節郭清が選択される.
卵巣から分泌されるエストロゲンには,血管や骨を保護する作用がある.そのため女性は,閉経後エストロゲンが減少することにより動脈硬化症など心血管系疾患や骨粗鬆症・脂質異常症などが増加することが知られている.
正常な卵巣機能を有した女性が子宮体癌のために根治手術を受けることにより,卵巣機能が術後早期に消退し,動脈硬化症など心血管系疾患・骨粗鬆症・脂質異常症などが引き起こされる危険性が考えられる.
一般的にはホルモン補充療法(hormone replacement therapy : HRT)は,エストロゲン低下によるQOL低下を改善する.HRTは現在の子宮体癌には禁忌とされているが,問題は子宮体癌治療後や既往のある患者に対するHRTで,子宮体癌の再発予後がどうなるかである.予後が変わらないとの報告や,予後が改善するとの報告があり,コンセンサスはいまだ得られていない.
昨年,日本産科婦人科学会と更年期医学会から,ホルモン補充療法ガイドライン1)が発行されたこともあり,その内容もふまえて,本稿では子宮体癌の手術で卵巣を摘出することの意義と悪影響・術後患者にHRTすることの可否を,子宮体癌の再発や生存率の観点から文献的に検討し,述べる.
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