連載 看護事故の舞台裏・22
身体拘束の可否
長野 展久
1
1東京海上日動メディカルサービス医療本部
pp.944-947
発行日 2015年10月10日
Published Date 2015/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686200304
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身体拘束ゼロ作戦は,かねてから厚生労働省が推進している高齢者ケアの1つです1)。確かに,身体拘束は人権擁護の観点から問題があるだけではなく,高齢者のQOLを損なう危険を有していて,身体機能の低下や寝たきりにつながる恐れもあり,場合によっては死期を早めることになりかねません。
そのため,転倒しないように,徘徊しないように,点滴や経管栄養などのチューブをいじらないようにという医療者側の都合で,安易に身体拘束をするのは控えるべきだという気運が高まっています。しかし当然のことながら,身体拘束をしなければ転倒・転落事故に直結する事例があるのも事実ですし,大事なチューブ類を自己抜去して病状が悪化するような事態も容易に想像できます。つまり,身体拘束と患者へ生じる有害事象とはいつも背中合わせであり,身体拘束をしてもしなくても,患者側の不利益と向き合うリスクは避けて通れません。
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