特集 在宅看護論の授業展開
第I章 在宅療養者の理解と看護
在宅における継続看護を考える
大塚 廣子
1
1前東京都立南多摩看護専門学校
pp.910-917
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100507
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入院中における退院指導
在院日数の短縮化に伴い,在宅で治療を継続する場合も多くなった。病院における退院指導も,在宅で療養する本人や家族の技術力に応じた指導内容に変わりつつある。しかし,看護師が対象者の生活環境(住居環境・経済環境・家族協力環境など)について,十分な情報を得るのは非常に困難である。なぜなら,多くの患者は入院前から同じ病気で療養しているわけではなく,そのとき発病で初めて自己管理をしながら生活せざるを得なくなったのであり,患者自身でさえ,自分たちの生活と照らし合わせて退院後の生活指導や医療処置指導を受け止めるには,限界があるからである。そのため,退院指導を受ける患者やその家族が,具体的な療養生活をイメージして在宅での生活環境について看護師に話すことはむずかしく,聞かれるままに答え,受け身的に指導を受けていることが多いと予測される。
退院に向けての医療処置指導や生活指導は,家族が来られない場合は患者本人にのみ行われ,患者自身ができるように実際に練習するなどの指導がなされている。しかし,自宅には同じ物品がないことが多く,金銭的に無理をしてでも同じ物品を揃えようとする。それが無理な場合,患者や家族は自分なりの判断で応用していく。しかし,この判断が常に適切であるとは限らない。退院後の患者や家族のこの行動については,実際に訪問しない限り,病院の看護師は適切か否か判断することはできない。看護師の訪問が必要のない在宅療養者の退院後の生活については,外来受診をして初めて実情を把握することができるのである。
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