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はじめに
わが国の看護師国家試験は,保健師助産師看護師学校養成所指定規則による教育内容をもとにした看護専門教育課程の修了を前提とし,看護師としてもちあわせるべき基本的な知識および技能を評価する目的で実施されている。昭和25(1950)年に第1回の試験が実施されて以来,看護職に期待される役割が拡大するなかで,その都度改正が行われ,改善されてきた。
その一方で,近年の看護師国家試験では毎年合格率が大きく変動するなど,試験問題の妥当性や信頼性の確保に関して,多くの課題を抱えている。このような状況をふまえ,平成14(2002)年の医道審議会保健師助産師看護師分科会保健師助産師看護師国家試験制度改善部会では,従来のように出題のたびに試験委員が問題を作成する方法では,良質な試験問題を効率的かつ恒常的に出題することが困難であるとの認識から,試験問題を出題する前にあらかじめ作成・蓄積する制度(プール制)の導入が決定された。
今後,試験問題を公募し,試験委員会で選定・修正を行うなどの作業を通じて,数年のうちに保健師助産師看護師とも数千題の問題をプールすることを目標として体制を整えることとなる。したがって,短期間で大量の試験問題をプールし,かつ看護師の資格試験として適切かつ妥当な試験内容を維持するためには,良質な試験問題が備える条件と,問題作成に関する具体的な方法を明らかにすることが緊急の課題となっている。
これまでわが国の看護師国家試験に関する研究としては,永山(2002)が1996~2000年までの看護師国家試験の設問について,独自に作成したタクソノミーによって分類し,出題の傾向を明らかにしたものがある。また畑尾(2001)は修正イーベル法を用い,看護師国家試験の個々の問題について,重要度と難易度の視点から分析し,国家試験の事後評価を行っている。今後,さらに研究成果を蓄積して,妥当性および信頼性の高い問題を作成するための方略を明らかにしていく必要がある。
そこで本研究班では,看護師国家試験のプール制度の導入をうけて,良質な試験問題の備える条件を明確にし,適切な試験問題作成方法を開発し,それら全体を含めたプール制運用システムの検討を行うことを目的として,一連の研究に取り組んだ。その成果を4回の連載として報告する。第1回は,過去に実施された第87~92回までの看護師国家試験問題の分析,評価を通じて,良質な試験問題が備える条件を明らかにした結果を報告する。
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