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はじめに
看護職は人々の健康上の問題解決を図り,健康な社会の実現を目指すため,関係者と連携しながら,専門的知識・技術を提供する医療の専門職である。これまでも看護の役割は時代の要請と共に変化し,発展し続けてきた。
今,時代が看護に求めている役割の一つにたばこ対策がある。看護職には,人々の健康を守る立場から,最も身近な,最も多数の医療職として,科学的根拠を示して,喫煙者に禁煙支援を行うことが期待されている。
しかし,日本看護協会による2001年調査1)では,女性看護職の喫煙率は24.5%と,一般女性の約2倍であり,さらに一般女性2)と比較してたばこに関する知識が全体として低いというショッキングな現実が報告された。この調査では,看護の対象者に対するたばこ教育への関与についても尋ねているが,やはり看護職の関与する程度は低く,特に喫煙看護職は非喫煙看護職に比較して低かった。
全国の看護学生の実態調査3~5)では,喫煙率の高さは看護,助産,保健師学校の順であり,特に看護学校の3年生の喫煙率は30%を超え,一般の20歳代の女性に比べて高いことも報告されている。
英国の看護学校では,禁煙教育により学年が上がるごとに喫煙率の低下がみられると報告6)されている。正しいたばこ教育は喫煙率を低下させると同時に,たばこ教育ができる看護職を育成することにもつながると期待される。
看護学生へのたばこ教育は,教育施設調査7)で組織的教育がなされている施設は13.2%,教科以外での防煙教育を実施している施設は41.4%であり,まだまだ積極的に取り組んでいるとは言い難い状況にある。
たばこ問題のような新たなニーズに対応できる人材の育成は,看護教育の重要課題である。現行の看護基礎教育カリキュラムの教育時間に限界があること,臨地実習とそのストレス,先輩・同輩からの喫煙誘惑,喫煙している看護教員による影響,教育施設内の禁煙環境の不徹底および禁煙支援の相談窓口の未設定など,多くの困難を抱えつつ,学生に,人々のヘルスニーズに応えられるたばこ教育をしていくにはどうしたらよいのであろうか。
本稿では,まず看護基礎教育でのたばこ教育を概観し,次に現状の看護基礎教育課程でたばこ問題がどのように教育されているのかを知る手がかりとして,出版社のテキストのたばこに関する記述部分を点検し,その結果から今後の看護基礎教育におけるたばこ教育のあり方を考えてみたい。
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