焦点 続・ユースカルチャー
若者のニヒリズムと「ニート」論
渡部 真
1
,
小池 高史
2
1横浜国立大学教育人間科学部
2横浜国立大学大学院教育学研究科
pp.586-591
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100319
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はじめに
4月のある日,横浜にある大学の研究室。大学自体が丘の上にあることもあり,6階の研究室からは,横浜の沿岸地域が一望できる。窓から,みなとみらいにあるランドマークタワーを眺めていると,そこへ1人の若者が訪ねてくる。
小池(以下K) 失礼します。何か用でしょうか?
渡部(以下W) ああ,小池さん。どうかしましたか?
K どうかしたかって,自分で呼び出したんじゃないですか。
W あ,そういえばそうでしたね。実は,『看護教育』に去年まで連載していた「ユースカルチャーの現在」を引き継ぐ形で,年2回くらいのペースで原稿を書くことになったんです。教育の問題や若い人の問題を,これまでの連載以上にズバズバっと斬っていくということなんですが。そこで小池さんにちょっと手伝ってもらえないかと思いまして。
K なるほど,自分にはそんな切れ味はないと気付いたのですね。
W そうじゃなくて。ただ,つい最近,自分がもう50代だということをつくづく思い知ったのです。雪の札幌で滑って転び,うった腕の痛みが長いこととれなくて。目はかすむし,髪の毛は減るし,物忘れはするし。つまり,考えたこともなかったんですが,僕はもう若者ではないらしいんです。若い人のことを考える場合,若い人側の視点というものも大切なので,困ってしまいました。それであなたを呼んだのですよ。
K それ,断ったらどうなるんですか?
W 破門です。言いにくいことでも,どんどん言ってください。
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