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はじめに
多肢選択問題(MCQ)によるCBT(Computer Based Testing)は,2005年度から医歯学教育で本格実施段階に入る。これに先立ち,CBTのトライアルと評価が行われている1)。一方,看護教育分野でもCBTの導入を視野に入れた研究が展開されはじめているが,未解決の課題も多い。看護教育でCBTを展開するにあたり,1)コア・カリキュラムを踏まえたMCQの蓄積,2)看護分野におけるCBT実施のためのソフトウェア,3)CBTトライアルと評価が必要となる。
MCQは看護師国家試験に採用されており,その作成マニュアルおよび妥当性に関する検討は濱田らにより行われている2─4)。CBTの成否はMCQの質と量に依存すると考えられるため,作成されたMCQの評価が重要となる。しかし,MCQの正解率や識別指数は実際のトライアルなくしては予測できない。濱田らはテコムインターナショナルの協力のもと,模擬試験において正解率と識別指数を求めている3)。なお,看護師国家試験の正解率や識別指数は公表されていない。このため,MCQの内容評価のためにCBTトライアルも必要だと筆者らは考える。
看護教育へのCBT導入を意識した研究は,川村らにより行われている5)。川村らによるCBTのトライアルは,過去の看護師国家試験問題を表計算ソフト(Microsoft Excel)に保存し,HTML形式のファイルにして実行している。ソフトウェアとして富士通インフォソフトテクノロジの「Internet Navigware」を使用しているが,市販ソフトの制約により煩雑な作業が求められたように,筆者らには思える。エクセルは表計算ソフトであり,データベースのようにMCQを入力および管理できる入力フォームは作成できないからである。
濱田および川村らによる研究は,MCQによるCBTの実施に必要な興味深い内容を多く含んでいる2─5)。しかし,これらを実証的に行うには看護教育を強く意識したソフトウェアの開発が不可欠である。
筆者らは,MCQの作成とオンラインでの実行を,「自己学修促進」と「CBTの実施」の両者をイメージしながら進めている6─8)。MCQの作成と管理には,データベースとして汎用性を意識してMicrosoft Accessを選んだ。また,このデータベースからMCQを読み込みオンラインで実行するプログラムは,自己学修とCBTをイメージしてオリジナルに開発した(図1)7, 8)。プログラムは初期設定を試験形式にするとCBT方式となり,演習形式にするとMCQごとに正解と解説およびコメントが表示される自己学修方式になる。
プログラムのオリジナル開発にこだわった理由は,看護教育現場に真に密着し,日々の変化に対応できなければ,利用者に使ってもらえるものとして発展しないと考えたからである。また,小規模な看護師養成校での利用を可能にすることも大切である。
筆者らは,開発したプログラムを学内のサーバ上におき,自己学修のため学生にMCQを提供した。すなわち,学生は学内LANおよび自宅からインターネットを介してこのサービスを受けた。また,筆者らは,このプログラムの利用促進のため,学内教員に呼びかけ,このソフトで何ができ,どのように使用するかの説明会を行った上でプログラムを提供した。その結果,利用者である学生および教員から,いくつかの指摘をもらった。
この報告書は,それらの指摘内容にもとづく筆者らの取り組みとプログラムの改良点を述べたものである。なお,筆者らの合言葉は「利用者学生,MCQ作成教員,プログラム開発教員の三位一体の連携」である。
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