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はじめに
近年,医療従事者の手指や医療器具を介する院内感染が報道され,医療現場での適切な対応が求められる1, 2)に至り,看護教育における病原微生物学・感染症学の重要性が強調されている3~5)。院内感染6~10)に関する文献や参考書は多く,卒後教育における学習材料も多い。しかし,有効な卒後教育のためには的確な卒前教育がなされていなければならない。また,臨床実習で直接患者に接する機会もあることから,看護学生は既に準医療従事者としての対応を求められる。
2002年10月25日にCDC(Centers for Disease Control and Prevention,米国疾病対策センター)の医療現場における手指衛生のためのガイドラインが改正された11)。これは,1985年に公開されたCDCの手洗いと病院環境制御のためのガイドライン12)の手洗いの部分に置き換わるものであり,病院感染対策の基本である手指衛生についてのCDCのこれまでの基本的な考え方を大きく転換させている。今回のガイドラインにおける最大のポイントは,CDCがこれまで推奨してきた流水下で石鹸による手洗いに代わり,アルコールベースの速乾性手指消毒薬をファーストチョイスとしたことにある。
本学における微生物学教育は病原微生物や感染症への関心を喚起するのみならず,スタンダードプリコーションを体得させ,かつ自ら勉学に励むための動機づけを目標としている。そのような教育の一環として本学看護学科では病原微生物学・免疫学の講義のなかで微生物学実習を行っている。この実習では,体表の微生物の分離培養や観察,さらには手洗いの効果や消毒法の検討などを通して,病原微生物の消毒法やスタンダードプリコーションなど感染症および感染制御に関連した事柄への学生の興味を引き出すことによって,自己学習への動機づけをしようとするものである。
そこで今回の実習においては,特に衛生学的手洗いと手指消毒が医療従事者の院内感染防止において重要な位置を占め,常にこのことを念頭において医療行為を行わなければならないという動機づけに有効であったかどうかの客観的評価を中心にアンケート形式にて試みた。
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