連載 私の一冊・10
熊野古道─馬越峠を歩く
小山 敦代
1
1青森県立保健大学健康科学部看護学科
pp.1128-1129
発行日 2005年12月1日
Published Date 2005/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100192
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- 文献概要
思いもかけないこと
2005年10月,思いもかけず「熊野古道」伊勢路の馬越峠を歩く機会に恵まれた。最近は,思いもかけないことの連続である。こうして岩波新書『熊野古道』を「私の1冊」として紹介することになったのも思いもかけないことであった。
本書は,中世史専攻の研究者であった兄の著書である。中世村落・荘園制・荘園絵図などが主な研究分野であったが,熊野古道踏査も20年以上にわたり,2004年7月,世界文化遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」にも学術調査委員として関わっていた。今年の1月にも元気で熊野古道を歩いていたが,3月に背中の痛みを訴え受診したところ,腎臓がんを原発とする進行がんで,骨転移,肺転移をきたし,手術,抗がん剤,放射線治療など,すべて効なく,坂道を転がるごとく悪化の途をたどり,5月には64歳で逝ってしまった。本人はもとより家族,関係者にとっても思いもかけないことであった。
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