- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
近年,世界各地で自然災害や紛争の発生が後をたたない中,2004年は日本においても相次ぐ台風の到来,集中豪雨,高波,そして大地震など大規模災害が多発し,抗しがたい自然の脅威をみせつけられた年であった。
新潟県中越地方の長岡市に位置する長岡赤十字看護専門学校(以下,当校と略す)はこの年,新潟・福島豪雨,新潟県中越地震という予想もしなかった2つの大災害を経験した(表1)。その中で,教職員は被災直後から学生の安全を確保し,学校機能を維持するための迅速な対応を迫られた。幸いなことに,2つの災害を通して学生・教職員に災害にともなう傷病の発生はなく,また学校施設・設備の被害もごく軽いものであった。しかし,学生・教職員に家屋が全壊もしくは半壊の被害を受けた者が数名おり,また中越地方に居住する大多数の学生・教職員の家屋もなんらかの被害を受けることとなった。
災害時は,短時間のうちに状況を把握し即座に適切な判断を行い,行動することが求められる。それまで当校には防災に関する規定はあったが,残念ながら「防災マニュアル」は存在しなかった。さらに,2つの大災害発生に直面し,いわゆる災害を防ぐ「防災」という概念のみでは発生した大災害に適切に対応することは難しく,災害時の「災害対応」を含めた具体的な行動マニュアルの必要性を痛感させられた。そこで,三重県教育委員会発行の『学校における地震防災の手引』を参考に,学校における防災・災害対応を「学校内外で災害にともなう危機的事態が発生した場合に,その影響を最小限におさえ,正常な学校運営を進められるよう対処すること」と定義し,防災・災害対応を含んだ『危機管理マニュアル』を作成した。
当校の危機管理マニュアルは,防災・災害対応のみでなく「医療安全教育・医療事故対応」も含むが,本稿では「防災および災害対応」に焦点をあて,過去の反省を活かしながら,どのようにマニュアルが作成されていったか,その過程とマニュアルの概要,および今後の課題について述べる。
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.