連載 使いみちのない時間・14
架け橋
丈久 了子
pp.150-153
発行日 2001年2月10日
Published Date 2001/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902997
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信号でバスが停まった。その振動が,由岐を浅い眠りから呼び戻した。ふと,フロントガラス越しに前を見て,由岐は思わずため息をついた。目の前に広がる海峡。そして,そこにまたがる大きな橋。
これが,明石海峡大橋。その雄大さに,由岐は恐れにも似た思いを抱いた。人は山に登り,眼下に広がる雲海や地上を見るとき,己のちっぽけな悩みなど取るに足りないのだと,悟りにも似た思いを抱くという。それとは違う,でも確かにそれと同質の畏敬の念が,由岐にこみ上げてくる。
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