特集 疫学なんてこわくない
【追跡研究1】精神科医療保護入院患者の退院後の経過を追う
海法 澄子
1
1神奈川県立衛生短期大学専攻科
pp.376-381
発行日 2002年5月10日
Published Date 2002/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902612
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保健師業務と疫学
保健所にはさまざまな情報が管理されています。それらの多くは,ある特定の時期に集計され,本庁に報告されたり,保健所年報や各会議で公表されます。また,各種公費負担制度を利用する住民の個人単位の情報については,所定の手続きの後に,取り決めのもと保管されています。保健師業務もこれらの情報を活用して,根拠に裏付けられた取り組みが大切だと認識していても,実際には情報は日々素通りしていく現状にあるのではないでしょうか。私も保健所に勤務していたころは,気になる現象があっても,把握したい実態があっても,情報を集めること,情報を整理すること,数値を集計することの労力よりは,目の前の業務をこなすことを優先させていた状況でした。
いま,自治体の保健師の役割のなかに,「地域保健医療計画」「母子保健計画」など,“計画”への参画が位置づけられています。計画は,地域の特性を反映させた目標が段階的に具体的に設定されています。そこには具体的な目標値や客観的評価指標として“数値”が示されています。しかし,その根拠は…と考えると,いま,改めて,保健師業務の基本である「地区診断」「地区把握」の意義を感じます。身近にある情報(データ)を活用した疫学的な取り組みは,“地域”をアセスメントする1つの方法として有効だと思います。時には立ち止まって,既存情報から“地域をみること”に労力を使ってみると,日々こなしていると感じている活動の根拠がみえてくるのかもしれません。
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