連載 世界のフィールドから 健康づくりはボーダレス・20[最終回]
公衆衛生に国境はない
中村 安秀
1
1大阪大学大学院人間科学研究科
pp.304-306
発行日 2001年4月10日
Published Date 2001/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902423
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「援助は人のためならず」
戦後,日本の地域保健活動はわが国の特殊性を強調するあまり,極めて閉鎖的な環境で発展してきた。それら先人たちの努力により,世界最高水準の乳児死亡率や平均余命という輝かしい成果が得られた。しかし,一方では先進諸国の公衆衛生学や保健医療活動のなかで,わが国の風土にあった部分は取り入れるが,日本から世界に発信して批判を仰ぐことはあまり行ってこなかった。いいかえれば輸入加工型の国際交流が主流だったことも事実である。現在の混沌とした地域保健を巡る現状をみると,そのような閉鎖的なアプローチが限界点に達しているのではないかと思われる。
保健・医療・福祉の連携,地域における介護問題,地域リハビリテーション,児童虐待など地域保健が抱える新たな問題は,地球規模で考えればすでに多くの国で試行錯誤が行われている課題である。また,在日外国人や在外邦人の増加,新興・再興感染症,環境問題などにみられるように,日本国内の保健医療の問題は国際保健の課題と直結している。いま,先進国や途上国を問わず世界各地で同時平行で行われているさまざまなチャレンジと積極的に交流し,日本の保健活動の現状や課題を発信し議論を深めることが求められている。
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