視点
公衆衛生に国境はない−21世紀に向けての地域保健
中村 安秀
1
1東京大学医学部国際地域保健学
pp.690-691
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902157
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地球規模での健康問題
1990年代は,旧ソ連の崩壊とそれに伴う東西対立の構図が崩れ,地球規模のグローバルな課題が噴出した時代であった.1990年の「子どものための世界サミット」以来,「国際人口開発会議(カイロ)」,「世界女性会議(ペキン)」など政府やNGO(非政府機関)を巻き込んだ国際会議が立て続けに開催された.これらの会議での重要な争点,すなわち,環境,人権,リプロダクティブ・ヘルス・ライツ,HIV/AIDS,開発などは,いずれも地球規模での健康問題と深く関連していた.
日本も例外ではない.HIV/AIDSや再興感染症,内分泌攪乱物質に代表される環境問題,国際的な人的交流の増加などにより,地球規模での健康問題と日本国内の公衆衛生の課題は直結している.国内問題と国際問題,先進諸国と開発途上国という垣根の中で考えるのではなく,ボーダレスな公衆衛生の発想をもち,地域での取り組みを行う時代になったといえる.
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