連載 公衆衛生ドキュメント―「生きる」とは何か・5
タイ国境で,カンボジア難民
桑原 史成
pp.590
発行日 2004年8月1日
Published Date 2004/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102652
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仏教国のカンボジアは,20世紀の後半において,ベトナムと共に世界の大国の狭間で翻弄された.その激動の歴史の中で,ポルポト派で知られるクメール・ルージュ(赤色クメール)による政権の時代(1975~1978年)は,あまりにも苛酷な受難が続いた.カンボジアの人口は約700万人とされるが,ポルポト派による虐殺で計り知れないほどの国民が殺された.
カンボジアと接するタイとの国境の山間部で生活していた,カンボジアでの戦乱を逃れて脱出した難民の数は,全人口の30%に匹敵する200万人余であった.当時の乏しい食糧事情や劣悪な衛生環境は,難民にとってはまことに耐えがたいものであった.
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