◆特集 作業療法の守備範囲
チーム医療における国境問題
砂原 茂一
1
1国立療養所東京病院
pp.5-11
発行日 1986年8月15日
Published Date 1986/8/15
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他山の石
もう10年も前になるであろうか,日本学術会議のシンポジウムの席上,求められて“薬剤師は薬局のガラス戸の中におさまっていて薬品棚の管理をやっているだけでは仕方がない。drug informationなどと称して副作用情報を伝えるといっても文献上の知識だけでしかなく,副作用のため患者が苦しんでいる現場を知らないのでは仕方がない。患者のそばに立って医師とともに薬剤が人間に出会う場面に立ち会い,薬物療法に直接協力すべきだ。”といったら日本薬剤師会の顧問弁護士Mさんに“先生,そんなことをしたら医師法違反になります。”と叱られた。夏目漱石に学生が“先生,辞書にはそんな訳はありません。”と言ったら漱石は“辞書の方を直しておけ。”といったという話があるが私は“法律の方を直してください。”という意味のことを遠回しに答えて引き下ったことがあった。
この事件があったあと,血中薬剤濃度モニタリングということが世界的に盛んとなり,とくに重要な薬剤については薬を飲みっ放し,注射しっ放しにするのではなく,時々血液中の薬剤濃度を測定して効果があるが有毒でないという適正血中濃度域を保つようにモニターすべきものとなった。薬剤師は英語でChemist(化学者)と呼ばれることもあるように本来は血液中の化学物質(薬剤)の濃度などを測る専門技術をもっているはずだが,現在の法律では患者から採血することは許されないのである。採血するためには臨床検査技師の資格を別に取得しなくてはならないのである。
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