特集 今求められる結核対策(1)—知っておきたい結核の基礎知識
薬剤耐性菌
豊田 恵美子
1
1国立国際医療センター呼吸器科
pp.464-468
発行日 2000年6月10日
Published Date 2000/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902201
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感染症への化学療法が始まって半世紀を越えた。この間に種々の抗菌剤が発見・開発され著しく進歩した一方で不適切な使用は耐性菌を生みだし蔓延させている。抗結核薬についても,ストレプトマイシン(SM)の導入後4か月より耐性菌が出現して単剤治療は失敗することがわかり,新薬の開発と種々併用療法のトライアルを経て,現在の初期強化短期化学療法が有効な治療法として確立されてきた。イソニアジド(INH)・SM・パラアミノサリチル酸(PAS)の時代はコンプライアンスが確保される長期入院治療であったが,INH・リファンピシン(RFP)・ピラジナミド(PZA)の時代になると入院期間が短縮されて,外来治療が主体になる一方で,治療失敗・再発・薬剤獲得耐性につながった。そして米国では過去30年間に薬剤耐性は2%から9%に上昇し,INHとRFPを含む多剤耐性菌の出現は世界中で脅威となった。そして甚大なる努力の結果,耐性獲得の防止には,多剤併用に基づく適正治療とDOT(Directly Observed Therapy)の遂行が有効であることが実証されている(一般に多剤耐性とはINH・RFP両剤を含む耐性と定義されている)。
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