連載 ニュースウォーク・22
介護保険のイソップ物語
白井 正夫
1
1元朝日新聞
pp.78-79
発行日 2000年1月10日
Published Date 2000/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902133
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土曜日の午前,JR横浜駅近くのビル街は初冬の日差しもはいらず寒々としていた。そんな通りでセミナー会場を探していたら,鷹巣町長の岩川徹さん(51歳)にばったり出会った。岩川さんは今日の講師で,やはり会場を探していた。秋田からは今朝お着きですかと尋ねたら,「介護保険の見直し問題などがあり5日前に豪京に来て,明後日帰ります」と返ってきた。
えっ,と思った。町長として町を1週間も留守にすることが意外というのではない。岩川さんは脳血管障害で倒れて右半身が麻痺した父を家で介護している話を聞いていたからだ。話を向けると,「いや,体に障害が残り車いす生活ですが,町の福祉介護サービスを使い,精神的には倒れる前と同じ生活をしています。私の女房も前と同じように仕事をしていますよ」と話してくれた。だから私も出かけられるんです,と言いたげだった。
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