連載 ドメスティックバイオレンス・4
私たちはバタード・ウーマンだった
野本 律子
1
1(株)IFF事業部
pp.612-614
発行日 1999年7月10日
Published Date 1999/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902017
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名付けられた問題
今,私の体験はバタード・ウーマンの体験と名付けられている。夫の暴力に疲れ果てて家を出た1984年の4月には「夫からの暴力でこまっています」ということは,相談の対象となる問題ではなかった。これ以前に私の体験を“アルコール依存症の妻”“AC(アダルトチルドレン)”または,“共依存の問題”として他の本や雑誌で語ってはきたが,母と私が体験した夫からの暴力は,アルコール依存症というキーワードだけでは決して語ることができなかった絶塑的な恐怖感と無力感そして恥辱感だった。同じ状況は多くの女性が体験していたが,名付けられていない.女性の生き難さは共有することができなかった。それぞれがつらい物語として個々別々にあった個人の問題だったのである。
「私はバタード・ウーマンだった」と体験を再構成するのにそれから10年が必要だった。
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