連載 ドメスティックバイオレンス・3
シェルター・サポートの現場から—保健婦さんとの連携
堀 琴美
1
1女のスペース・おん駆け込みシェルター運営委員会事務局
pp.534-536
発行日 1999年6月10日
Published Date 1999/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902001
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駆け込みシェルターのサポート・ケースから
真澄(仮名)さんの相談は,長年にわたる夫の暴力が近ごろひどくなったので,もう逃げ出したいのだけれど,欝状態で引きこもっている娘を連れ出すことができなくて困っている,というものでした。仕事もせず一日中ゴロゴロと家にいる夫は,娘を精神科の医者に診せることも許さず,何年も治療をさせずに家に閉じ込め,イライラすると妻を殴り,娘を蹴りつけ,悪化する娘の症状を妻のせいにして責めたて,娘の世話をさせることで妻を監視し,一切の自由を与えず,外出ができなくなるよう圧力をかけ,母娘を孤立無援の状態において拘束し続けていました。
私たちは,事態の深刻さと危険度・緊急度の高さを察知し,すぐにサポート・チームを組んで,真澄さん母娘をシェルターに受け入れることができるよう準備を始めました。このような場面で,どんなケースにおいても一番大切なことは,ご本人の決意です。私たちは真澄さんと相談を数回にわたって繰り返し,最終的な意思確認をしました。「家を出る」ということは,「夫と決別」して,「自立して自分のための人生をスタートさせる」ということです。女手ひとつで子どもを養うことの困難さに加え,真澄さんの場合は,病気の娘を連れ出し治療と回復を最優先にする生活を組み立てていかなければなりません。真澄さんは,命の危険に晒されながら怯えて家に残るより,娘と一緒に安全に暮らすため,困難を乗り越え自立生活を目指す覚悟を決めました。
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