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統計を用いた調査研究
保健所で行うべき調査研究には種々の内容,形式が考えられます。この中には保健所が持っている統計を用いた調査研究があります。保健所には業務の一環として種々の統計資料が集められます。地域保健法にも保健所の業務として「人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項」があげられています。また,その他の法律や通達などにも基づいてさまざまな統計が集められています。さらに,実施した業務に関する統計も存在しています。これらの統計資料は,本庁や厚生省に送られ,保健所運営報告に掲載された後は,多くの場合まったく使われることなく死蔵されているのではないかと思います。その結果,例えば管内の市町村別の死因別死亡数すら保健所自身が十分に把握していないところも多いのではないかと思います。これでは,保健所が市町村の公衆衛生行政を十分に支援できる状態にあるとは言えないような気がします。
ところで,統計と聞くとそれだけで逃げ出してしまいたくなる方が多いのではないかと思います。しかし,保健所に存在する統計を利用するのは,保健婦学校時代に皆さんが苦しんだ内容とは,基本的に異なったことです。例えば,死亡率は死亡数を人口で割った値を1000倍あるいは10万倍して,人口1000人当たりもしくは10万人当たりの死亡数を計算した値に過ぎません。非常に単純な計算です。SMR(標準化死亡比)に代表される死亡率の年齢調整の計算も難しくてできないようなものではありません。平均寿命ですらパソコンの表計算ソフトを使えば簡単に算出できます。また,このような死亡指標の意味の理解も容易です。粗死亡率やSMRは高ければ悪い状態を意味し,平均寿命は低ければ悪い状態を意味しています。保健所に存在する統計は概ねこのような水準のもので,取り扱うことが困難なものはむしろ少ないのではないかと思います。
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