特集 感染症対策のパラダイムシフト
新興・再興感染症
尾崎 米厚
1
1国立公衆衛生院疫学部
pp.1094-1100
発行日 1997年12月10日
Published Date 1997/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901695
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新興・再興感染症とは何か
新興・再興感染症elnerging and re-emerging infectious diseasesは,新流行・再流行感染症とも呼ばれるが,その意味するところは以下のとおりである。すなわち,新興感染症とは過去約20年の間に,それまで明らかにされていなかった病原体に起因した公衆衛生学上問題となるような新たな感染症であり,再興感染症とは,かつて存在した感染症で公衆衛生学上ほとんど問題とならないようになっていたが,近年再び増加してきたもの,あるいは将来に再び問題となる可能性のある感染症である。
先進国などでは,経済発展,それに伴う栄養改善,衛生環境の改善,医療水準の向上,予防接種の普及,抗菌薬の発見などの理由により,1940年代以降大規模な感染症の流行がみられなくなり,その死亡率も顕著に減少した。そして,感染症はほぼ制圧されて今後は非感染性慢性疾患の時代であると認識され,さまざまな公衆衛生対策が発展してきた。しかし,1980年代頃より新たな感染症や新たな病原体の発見が相次ぎ,世界的な流行も起きるようになってきた。AIDSのようにある世代の死亡率にも大きな影響を与える感染症も現れた。さらには,再び大きな流行が起こり,世界的に大きな公衆衛生上の問題となっている感染症もある。1976年より新たに発見された病原体や感染症は図に示すとおりである1)。
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