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1.はじめに
本邦では,献血血液は日本赤十字社において病原体スクリーニングすなわち,HBV(hepatitis B virus),HCV(hepatitis C virus),HIV(human immunodeficiency virus),HTLV(human T-cell leukemia virus type Ⅰ)-Ⅰ,ヒトパルボウイルスB19(human parvovirus;PV-B19),サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV),梅毒の血清学的検査およびHBV,HCV,HIVの核酸増幅検査(nucleic acid amplification test;NAT)が実施されている(表1)1).NATの導入によってHIV/HBV/HCVのウイルス感染のリスクは海外と比較しても限りなく減少し2),輸血血液における感染症対策は飛躍的に向上したといえる.
しかし,地球規模の気候変化,生活環境の変化や高速移動手段の発達に伴い新興・再興感染症の脅威は増大している.1985年にウシ海綿状脳症(bovine spongiform encephalopathy;BSE),1997年に高病原性トリインフルエンザ,1999年にウエストナイル熱,2003年に重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome;SARS)が発生した3).特に,1999年にニューヨークで発生したウエストナイルウイルス(west nile virus;WNV)は多数の感染者・死亡者を出しただけではなく,輸血や臓器移植による感染が報告され,緊急対策が講じられた.2007年現在でも終息の気配はなく,米国のみならずロシアやシベリアでも発生が認められ,日本への移入も時間の問題と言われている.今回,われわれは,献血血液におけるWNVの安全性対策としてNATの体制整備を行ったので,献血血液における新興・再興感染症対策を含めてここに紹介する.
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