活動報告
病原性大腸菌による集団感染事例への対応
野山 幸子
1
,
内藤 浩子
1
,
西尾 恵
1
,
頓宮 保栄
1
,
發坂 耕治
1
1岡山県邑久地域保健所
pp.128-136
発行日 1997年2月10日
Published Date 1997/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901521
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●要約
1996年5月に,岡山県邑久町で発生した病原性大腸菌O157による集団発生事例への対応を,3期に分けて報告し,保健所保健婦の役割について検討を加えた。
第1期は,有症者が増え続けた時期であり,健康調査と検便,入院児童と保護者への対応が中心となった。第2期では一般住民,二次感染者への対応,第3期では入院児童たちの退院後の継続ケアについてまとめた。
地域保健法全面施行を目前にして,この事例をとおして,以下のとおり保健所保健婦の役割が明確になった。
①健康調査の中でも個への視点を持っており,特に心のケアという面では,身体面だけでなく精神面におけるニーズの把握を行い,一般に見過ごされがちなPTSDの対応を企画し,こども思春期相談を活用するなど対策を広げていった。
②一般住民への対応は町保健婦が対応し,入院者,菌陽性者,学校への対応は保健所保健婦と役割分担し,効果的な対策をすすめるため,連絡調整に努めた。
③菌陽性者の家族全員に対し,二次感染予防と不安の除去のため,電話による健康調査を行った。
④学校に対し,きめ細かい情報交換と保護者から寄せられる不安についてアドバイスを行うなど,連携と信頼関係を深めた。
⑤入院児童と保護者が抱える問題を,同じ悩みをもつ者同士,小児精神科医との話し合いにより集団の場で解決しようとした。
以上であるが,一次的対応と二次的対応を町保健婦と役割分担し,かつ重層的に活動したこと,さらに保健所の市町村支援の視点と広域的,技術的専門機関であるという保健所の機能が整理できた。
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