特集 病原性大腸菌O157の脅威
わが国における病原性大腸菌O157の流行
高鳥毛 敏雄
1
,
井田 修
2
,
池田 和功
2
,
木本 絹子
2
1大阪大学医学部公衆衛生学
2大阪大学医学部公衆衛生学教室
pp.89-95
発行日 1997年2月15日
Published Date 1997/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901638
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
大腸菌O157:H7が社会的に脅威であるとの認識は1982年に米国のオレゴン州とミシガン州で発生したハンバーガーによる食中毒事件にはじまる.この時Rileyらが原因菌として大腸菌O157:H7を分離し,この下痢症を出血性大腸炎(hemorrhagic colitis)と名づけた.この後,1983年にKarmaliが散発患者の調査から病原性大腸菌のVero毒素がHUS(hemolytic uremic syndrome)と関係していることを明らかにした.さらに,同年Johnsonらは大腸菌Ol57:H17がVero毒素を産生することを明らかにした.HUSについて記載したのはGrasserで,1955年にスイスにおける症例についてである.Vero毒素については1977年にKonowalchukらによって発見された.カナダにおけるふりかえり調査により1970年代の散発下痢症例からも頻回に菌が分離された.このことからすると1982年の食中毒事件以前からこの菌が存在していたと考えられる.1984年には米国ネブラスカ州で最初の死亡例(4名)が,1985年のカナダのオンタリオの老人ホームで17名の死者が発生するなど,米国,カナダ,英国で続々報告されるようになった.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.