研究
保健婦が行き詰まりを感じた訪問事例の援助の見直し
松下 光子
1
1千葉大学大学院看護学研究科博士後期課程
pp.1101-1107
発行日 1996年12月10日
Published Date 1996/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901489
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●要約
目的:保健婦が,訪問活動において援助が行き詰まったとしている事象の背景や成り立ちを明らかにし,援助を発展させる方法を見出す。
方法:担当保健婦が援助が行き詰まったと判断した11事例について,まず,保健婦側の情報に基づき,その状態を調べた。次に,家庭訪問調査により本人・家族側から,①看護観察の基本項目を用いた全体像,②本人・家族側に立った生活過程,③本人・家族の気持ち・考えという3つの視点を重視して,当時の状況を把握した。その情報に基づき,新しい援助計画を作成し,担当保健婦の当時の計画と対比検討した。
結果:(1)援助の行き詰まった状態の成り立ち:機能障害程度と意欲が低下し,無為な1日を過ごす本人,家族の意欲の欠如が本人・家族の姿である。援助が行き詰まったと判断した時期は,本人・家族への面接以前,初回面接で情報が少ない段階,面接は繰り返しても本人・家族が助言を受け入れない段階であった。(2)援助計画の対比:担当保健婦の計画は,外出や機能訓練の勧め,福祉サービスの導入に偏りがちであった。新しい計画は,本人・家族の健康管理,気持ち・考えへの働きかけ,共に考える,家族の協力と交流を促すことを重視した。
考察:援助が行き詰まるということは,十分な情報収集とアセスメントをせずに,自分の考えた援助を進め,行き詰まっている保健婦の認識の側の問題と言える。3つの視点から対象をとらえ直したならば,自己の認識を変革し,援助を発展させる可能性がある。
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