特集 保健活動のパラダイム・シフト
[これからの保健活動]
池袋保健所のパラダイム・シフト
前田 孝弘
1
1東京都豊島区池袋保健所
pp.948-955
発行日 1996年11月25日
Published Date 1996/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901454
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はじめに
東京23区の副都心としての性格をもち,幹線道路に沿ったビルと高層マンション群,ターミナル駅周辺の繁華街,かつては東北地方からの出稼ぎ労働者,今は外国人労働者の多く住む劣悪な居住条件の木造賃貸住宅群,その中にドヤ居住者あり,公園に路上生活者あり,何でもありという街の明治通り沿いに表口を,裏口は風俗営業店と軒を並べた状態で,池袋保健所は排気ガスにまみれて建っている。地域保健法で述べられた数々の保健所機能強化という内輪の議論はさておいて,と置いていかれるような財政難,保健所の建っている土地は今売ればいくらになるかという議論が背中で声高になされ,面前にはさまざまな電話相談,来所相談,そして路上生活者対策を始めてからは,路上生活者も友人を連れて,「こいつ身体の調子が悪そうだ。相談にのってやってくれ」と訪ねてくる。
パラダイム・シフト論議の一方,腹を減らしている客に定食でもいいから出さざるを得ない。ゆっくり,献立を考えて,材料を揃えて,調理に時間をかけてという訳にはいかない。「腹,減っているんだ。何時間かかってるんだよ」と罵声が飛んでくる環境の中での取り組みを紹介したい。パラダイム・シフトと言えるかどうかは,読んでいただいた方に決めていただきたいと思う。
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