特集 精神保健福祉法を生かす活動
やどかりの里の活動と保健に期待すること—地域生活支援体制づくりを軸にして
谷中 輝雄
1
1やどかりの里
pp.773-779
発行日 1996年10月10日
Published Date 1996/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901422
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はじめに
また終戦記念日の8月15日がめぐってきた。それは1945年のこと。私にとって1970年の8月15日は精神保健活動への開戦の日である。それは3人の精神障害者を退院させ,共同住居の活動を開始した日であった。開始当時はグループホームのような形態で始めたが,さまざまな問題からケア付グループホーム(職員が共に生活をする)形態となっていった。
この形は,病院における社会復帰活動の一翼を担い,中間宿舎の活動として位置づけ,デイケアや患者会活動とともに退院したあとのアフター・ケア的な発想が強かった。ところが病院長は,火事を引き起こしたり,近隣に迷惑をかけたりした時の責任は誰が負うのかと心配をした。当時は,「病院長が責任を持つのでやろう」という覚悟がなければできなかった時代である。病院長は退院させた患者の責任までは負えないとの理由から,中間宿舎の活動の必要性は認めるものの,病院は一切関知しないとの結論であった。こうして,私個人の責任においてこの活動を行うこととなった。幸か不幸か,医療とは別枠の福祉の活動としての位置づけで出発した。「やどかりの里」と命名したこの活動は1973年に社団法人として認可された。当時,「精神障害者の社会復帰のための活動は行政が積極的に取り組んで欲しい」と要望したのであったが,民営でしかできなかった。
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