特集 〈やどかりの里〉に見る"生活の支え"—地域精神衛生活動の展開の中で
レポート
〈やどかりの里〉の実践—その歴史的経過と今日的位置づけ"生活の支え"がもたらしたものは………
谷中 輝雄
1
,
田口 義子
1
,
荒田 稔
1
1やどかりの里
pp.10-19
発行日 1980年1月10日
Published Date 1980/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206200
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はじめに
〈やどかりの里〉10年間の実践は,地域の中で"精神障害者"の生活を支えるための苦闘の歴史であるといっても過言ではない。閉鎖病棟からの脱出。地域で生活を可能にしていくための住まいの獲得。独立のための職の確保。地域の中に安心できる場作り。これらの取組みは"精神障害者"が地域社会の中で極く当たり前に生きていくことを可能にするための努力であり,更に,地域社会の中に自然な形で溶け込んで,極く当たり前なつき合いをくり広げていき,生活を持続するための創意工夫であった。これは,まさに地域社会の中で極く当たり前の生活実現を一貫して求め続けてきたドラマであるともいえよう。
このドラマの展開は"患者"の要請を"医療従事者"が受けて援助したのが始まりであった。種種の問題の中で,"患者""その家族"及び"医療従事者"が一体となって作り上げていく作業が始まり,市民も参加しての"いこいの家"へと形を整えていった。"いこいの家"を中心に地域社会の中で"精神障害者"の生活を支えていく可能性は拡大した。しかしながら,彼らの生活の支えは"いこいの家"の実現化だけでは十分とはいえない。現在,地域の中で生活していくために,支え・支えられるシステム作りを目指しての取組みが始められているのである。
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