連載 保健福祉システム管理論・5
経営管理とケアマネジメント
矢野 聡
1
1東京海上メディカルサービス
pp.143-148
発行日 1996年2月10日
Published Date 1996/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901322
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
公的部門,民間非営利部門における「経営」
保健福祉の分野で経営に話がおよぶと,従事者と外部双方から必ずとっていいほど「拒否反応」がある。たとえ市場社会の存在とそのルールを容認できる人であっても,自分たちの業務はそれとは異なる,というものである。この論理は,確かに要点をついてはいる。すでに見たように,疾病,障害は生きているかぎりすべての人に起こりうるリスクであって,このリスクを貧困その他により家族や地域社会の枠内で回避できないところから,慈善事業,そして社会保障が生まれてきたことはよく知られている事実である。医療,介護,福祉などのサービス発達はまさにこの経緯に当てはまる。
この理由からこれらの組織は営利法人によらず,国や地方自治体をはじめ医療法人や社会福祉法人など,民間であっても非営利の法人にのみ運営が許されてきた。経済学者のいう「市場の失敗」例であり,社会的公正の観点から税や社会保険料などの公的な財源(公共財)を集中的に投入する部門であるという認識は,国民全体に広く知れ渡っている*。
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.