特別記事
ブレイクスルー展開記[2]
吉田 浩二
1
1北海道深川保健所
pp.961-965
発行日 1995年12月10日
Published Date 1995/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901265
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1994年の晩秋のある日,若い女性からの電話を受けた。彼女は,私が以前看護学校で講義を受け持っていた保健婦科で,私の講義を受けたことのあるA市の保健婦のKであると名乗った。KさんたちはA市の自主研究グループの予算をとり,保健婦活動の見直しのために地域の問題発見をするのだという。そこで,地域の統計資料の分析の助言をしてほしいという依頼であった。
私は以前,保健婦科で「数字の鬼」といわれるほどに,レポートや試験で学生を泣かせていた(らしい)。毎年講義の最初に大量の統計資料を渡し,地域の問題発見のレポートを書かせていた(それは今でも続けているが)。Kさんたちはそれを思い出し,吉田先生ならきっと自分たちの手には負えない統計資料をチョチョイと分析し,地域の問題を浮き彫りにしてくれるにちがいないと期待したのであろう。しかし,私の回答は彼女にとっては意外なものであったにちがいない。なぜなら,統計資料を集めることを今はちょっとやめて,まず地域のあるべき姿を一緒に考えてみませんかと答えたからだ。A市の保健婦活動の見直しは,そのような出会いから始まった。
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