特集 結核対策のリフォーム
結核対策のブレイクスルー
高鳥毛 敏雄
1
1大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学
pp.168-171
発行日 2004年3月1日
Published Date 2004/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100535
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わが国の結核罹患率の低下速度は,結核の短期化学療法が普及し始めた1980年代から鈍化傾向となった1).平成9年に上昇に転じ,平成11年に厚生省(現厚生労働省)は緊急事態宣言を発令,社会全体に結核に対する警戒を喚起するに至った.結核以外の感染症対策は平成11年に感染症新法に移行されたが,結核対策については抜本的な法改正はなされていない.結核対策はこれまで感染症の中では,手直しが繰り返されてきた唯一の対策であったが,結核の低蔓延化,社会経済弱者への偏在化が強まるなど,疫学状況の変化の中で結核問題を克服していくには,結核対策のパラダイムシフトが必要となっている2).
結核対策のリフォームが必要となっている背景
1. 低蔓延時代の感染症としての対策への転換
現在の結核対策の枠組は,結核が国民病として蔓延していた時代につくられたものである.結核の罹患率が低下してくるにつれ,年齢的偏在,地域的偏在,社会経済階層的偏在の傾向が顕著となってきて,これまでのすべての人々を対象とする画一的,一律的な対策の手法では効果が上がらない状況となっている.患者が多かった時期には実現できなかった,一人ひとりの患者に丁寧に徹底してかかわることが可能となっている.
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