連載 家族を考える・7
思春期外来でみる子と親
北村 邦夫
1
1社団法人日本家族計画協会クリニック
pp.584-585
発行日 1995年7月10日
Published Date 1995/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901183
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性感染症(STD)の不安でクリニックを訪れたA子は高校1年生。11月に姉の有名大学への推薦入学が内定してから生活が一変したという。数か年間にわたって無月経を理由に通院している姉と共にここを訪れたのは1月。診察室では小声で,「セックスの経験があります」と答えた。家のヒロインとなった姉に,親の目が一心に向けられる一方,昨年の同時期に高校受験に取り組んでいた自分の惨たんたる過去をいやが上にも思い出すことになったのだ。
姉よりも偏差値がはるかに低かった自分の目指す高校は知れたものだ。「昨年の私の受験には無関心だった親が,今年の姉の受験への心配は何だ」という当時の批判めいた言い分が彼女にはあった。家の中で安住の場を失った自分を感じ始めた頃に誘われた同級生とのセックス。身体的に欲求があったわけではないが,肌と肌との触れ合いには心のやすらぎを覚えたという。「本当に欲しかったのは親の関心だった」と言わんばかりの彼女に,無意識のうちに子供たちを苦しめ悩ませている大人が少なくないことを実感した。
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