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石鹸づくりに励む桃源郷—精神障害者が自信と誇りを持てるように 佐久福祉事業所 ねば塾
石井 義治
pp.1069-1072
発行日 1993年12月10日
Published Date 1993/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900835
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“ねば塾”は,長野県佐久市の田園地区で,塾長の笠原慎一氏が経営する福祉作業所。20名の精神障害や知能に遅れを持った人たち(うち入寮者6名)が,近所のパートの主婦たちと石鹸づくりのほか,市から請け負った県立公園の清掃事業,便利屋などの収入のみで運営し,公的な補助金はいっさい受けていない。
ねば塾という聞き慣れない名前は「障害のある人が当たり前に生きていけるように,頑張らねば,耐えねば,働かねば,そして根を張っていかねば」という気持ちでつけたという。塾名以上に風変わりなのが「今日できることは明日やろう」「失敗は他人のせい」という2つのスローガン。常に他人と比較され「ダメだ,ダメだ」と言われ続けて自信も誇りも失いオドオドしている精神障害や知能の遅れた人が,急かされず,失敗しても責められないことで,気持ちを楽にして仕事ができるようにという配慮である。ねば塾では万事このペースで,何もしないでふらふらしている人がいても,誰も咎めないし,彼自身も自分ができる仕事のときには率先して参加する。
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