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石鹸の科學
山根 嚴美
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1ライオン油脂株式會社
pp.15-18
発行日 1950年8月15日
Published Date 1950/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906686
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石炭の生産量がその國の化學工業の水準を物語るものであれば,石鹸の消費量は又その國の生活水準を指示すると云つても過言ではない。我國に於ては,戰前1人當り2.5kgに達した石鹸の消費量も終戰後一時は,原料油の不足の爲に數百grという割當量に滿足せざるを得なかつた。然し一般の社會情勢の安定化と共に略々戰前に近い状態に復歸し,数カ月のうちに完全に自由販賣に移行しようとしている。石鹸の用途は非常に多方面にわたつて居り,日常のクリームの如き化粧品,浴用,洗濯用は勿論藥用,繊維の紡織用,一寸變つたものでは針金を伸ばす際に用いる伸線用,新造船の進水用の潤滑劑等,その用途は枚擧に暇がない程であり,直接或いは間接に我々の日常生活に關係している。
石鹸の原料として用いられるものは油脂とアルカリ(主として苛性ソーダ,苛性カリ)である。油脂としては動物性油脂(牛脂・豚脂等),植物性油脂(椰子油・パーム油・棉實油・箆麻子油・亜麻仁油・大豆油・糠油・樹脂等),水産動物性油脂(鰛油・鰊油・鯨油等)があり,目的によつて此等の油脂を水素と反應せしめて得られる硬化油(特に魚油の場合)として,通常單體の油脂が用いられることはなく,此等の油脂の混合物がその用途に適した配合に於て用いられる。油脂は加水分解すると脂肪酸とグリセリンとに分けられる。石鹸は脂肪酸のアルカリによつて中和せられた脂肪酸のソーダ鹽,或いはカリ鹽である。
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