連載 母と子のこころの相談室から—思春期・3
『死と再生』につきあう時期—登校拒否のケースから
田中 千穂子
1
1花クリニック精神神経科
pp.1096-1099
発行日 1991年12月10日
Published Date 1991/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900390
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登校を拒否することをめぐって
思春期という時期に多くとりあげられるテーマとして,「登校拒否」があげられます。1941年にジョンソン,M.1)によって,「身体的,精神的疾患をもたず,家庭は教育の意義を理解し,本人は非行でも怠学でもないのに学校に行けない状態」と定義された学校恐怖症(school phobia)は,その名称が不潔恐怖などの恐怖神経症と紛らわしいこと,恐怖の対象が学校とは限らないことから,登校拒否(school refusal)と呼ばれるようになりました(渡辺3)による)。現在ではより幅広い意味を含む不登校という名称も用いられています。
私は登校拒否の原因について,もちろん個々のケースによってその力点は異なってきますが,多くの場合,学校側の問題だけでも,家庭だけの責任でもない,学校・家庭・社会,それぞれの中にある歪みが相互的に子どもに影響して生じたものであると考えています。そしてそのような自分が受けている歪みに対して,「私は困っているの,助けて」というサインが登校拒否であり,そのサインを出すことによって自分が,そして家族が置かれている状況を,より良きものに変容させていこうとする現われであると理解しています。
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