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はじめに
健康づくりが叫ばれるようになってからこのかた,地域看護活動にとってもさまざまな意見が聞かれる今日このごろである。こうしたなかにあって,老後の寝たきりの健康状態の問題が大きく取り上げられたり,一方では子育ての周辺の問題を考え直そうといったことが騒がれたりし始めている。それにしても私たちを取り巻く健康状況は,寿命の延長とともに種々の加齢現象を伴い,その生活の変化とともにさまざまな健康問題を投げかけている。一方,人びとが生活している地域の状況をみると,都市での生活を取り巻く状況も,そのコミュニティの変化や保健衛生上の問題,社会資源の問題,そして活動のさまも変化してきており,どのようにして健康問題に取り組んでいけばよいのか迷ってしまう。しかし現状における健康問題はいずれも生活のなかに潜んでおり,その解決のためには「自ら出発させた健康づくり」に取り組んでもらうほかはないと思われる。地域の人びとが健康を創り上げていくためには,その1人1人が自分のおかれている生活状況を理解し,自ら「どのようにして健康を創っていくかを自覚し,その方法を選んでいくこと」が望ましいと思われる。
川崎市高津保健所では,地域の人びとと健康情報の交換のできる窓口として,昭和53年より「健康増進教室」を実施してきた。この教室の受講者を地域の健康づくりを考える具体的な対象として把握し,「地域住民が自ら行う健康づくり活動」として,活動が開始できないか検討を行ってきた。この「地域における健康づくり活動の試み」のなかで,私自身の戸惑いや考え,体験などをとおして得たものを「記録」とすることによって,今後の活動の参考に資することになれば幸いだと思う。
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