発言席
高齢者対策における保健婦の役割
高橋 弘
1
1愛媛県松山央保健所
pp.87
発行日 1990年2月10日
Published Date 1990/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900015
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「公衆衛生の原点は疾病予防と早期発見,そして一歩すすんだ健康増進にある」ことはつい最近まで論を待たないところであった。しかし,高齢化社会が急速にすすむなかで,原点かどうかはともかくとして,従来福祉の領域と考えられてきた介護とかケアの問題が保健すなわち公衆衛生に携わるものにとって無視できない,むしろきわめて大きな位置を占めるものとなってきた。そうなると,public health nurseたる保健婦の役割も自ずから変化してこざるを得ない。その場合,保健婦の役割はコーディネーターであるという論が多い。すでに寝たきりなどの状態にある人のケアの場合にはまったく賛成であって,保健婦は訪問看護婦的な側面ももたねばならぬとしてもそれが活動の主ではない。いくら保健婦が増えたといっても多くの市町村ではそのための絶対数が不足しているし,臨床経験のない保健婦にはその適性も乏しいと考える。そもそも訪問看護は本来医療機関の責任において行うのが本筋であろう。それができない地域では在宅看護婦やホームヘルパー,最近では介護福祉士などに実際の実践活動はゆだねて,保健婦は保健指導や家族支援などにはかかわりつつも,民生委員なども含めた横のつながりを確かにすることに重点を置いた方がよい。
しかし,問題は寝たきりあるいは痴呆の予備軍ともいうべき人をどうするかである。
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