調査・報告
ある企業の現場から—愁訴と健康管理
今井 香織
1,2
1ホライズン心理・教育センター
2現在北里大学看護学部公衆衛生学
pp.1025-1029
発行日 1988年11月10日
Published Date 1988/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207644
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はじめに
時代の変化に伴って,健康問題の現れ方も変化する。企業内の健康管理も,かつて職場の物理的な環境条件が問題となった時代には,物的な条件の整備が主たる健康管理の目標となった。ところが今日は物理的な条件はある程度満たされ,健康問題の所在も大きく変化してきているように思われる。
「価値観の多様化時代」といわれているが,物質的に満たされてくるにつれ,人びとの欲求は次第に生理的なものから,より高次の自己実現を目指したものへと変化してくる。そこで企業も,かつての効率第一主義から脱して,精神的な充足感を求める人びとの求めに応えることが要求されるようになってきている。企業の社会的責任が福祉の面から説かれるのも,そういった社会的な要請を背景にしていると考えられる。ともすれば効率主義に傾きがちな企業のなかにも,人間性と全体性を尊重した視点と施策を持ち込もうとする動きが出てきている。
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