連載 住宅問題と保健婦・5
「住まい」と「保健指導」
中沢 正夫
1
,
三浦 弘史
1
,
岩本 百里
2,3
,
池島 美智子
2
,
久我 一代
2
,
林 恵子
2
1代々木病院
2住宅問題研究会
3荒川区荒川保健所
pp.1006-1011
発行日 1986年12月10日
Published Date 1986/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207251
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保健指導から「住まい」の問題がなぜ欠けおちたのか
健康を保持・増進させるために,あるいは,疾病を治すために,その人の生活にどのように「働きかける」かは保健指導の大きな柱である。「生活」とは包括的な概念で,中を区分することがむずかしい。「衣,食,住」という分け方もできるし,「労働,つきあい,生殖」と分けてもよい。いずれにせよ,個体が生存し,生きつづけようとする「営み」と「その場」のことである。「その場」の中で「住まい」は中心的なものである。「どんな所にある,どんな建物に,だれとどのように住んでいるか」を見きわめ,「どこを手直ししたら健康を増進する"住まい方"になるか」という問題設定をすることは,保健指導にとって不可欠のことである。しかるに,最近の保健指導の中ではこの点がスッポリとぬけおちてしまっている。「住まい」の問題に働きかけないだけではない。そういう「住まい」と「健康」という問題設定をする感覚がなくなってきているのである。なぜであろうか?
「住まい」への働きかけは,かつて保健活動の中心的課題であった。結核対策,寄生虫駆除の闘い,脳卒中予防活動などの中で,保健婦は住居の改善を含む「住」環境の手直しを直接助言し,実施させてきた歴史を持っている。
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