連載 質の高い援助を考える・8
実践できるレベルまで検討されていなかったことに気づいた例(I)—長期療養の結核事例の検討から
中重 喜代子
1,2
,
Y
2
1東京女子医大看護短大
2事例検討会
pp.381-389
発行日 1982年5月10日
Published Date 1982/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206521
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はじめに
この事例が最初に検討されたのは,昭和49年2月であった。この時レポーターは,20歳代に結核に罹患し,46歳まで断続的に治療を受けているH氏と初めて所内面接し,不徹底な治療のため排菌が続いていることを問題としてとらえていた。会の記録によると,この時のインシデント様レポートと,登録カードに記されていた経過をよりどころとし,今後の療養生活に保健婦としてどうかかわっていけばよいかを,3回にわたって検討している。
それから3年半経た52年10月,その後の経過がレポーターから報告された。この間,H氏の健康状態には大きな変化が生じていた。メンバーは,《49年の時出し合った対策が実行に移されていればこうはならなかったのではないか》と,無念さをあらわにし,それをあえてメンバーに示してくれたレポーターも,責められているような思いにかられ,一時は感情が入って客観的な分析が困難な状態に陥ったが,検討を進めていくうちに,49年の時の討議が不十分であったことにメンバー全員が気づいていった。
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